Global Insight

グローバル・インサイト

Global Insight vol.57

日付2021/02/24

インド

 

【直接税分野における重要な規制の変更点及び重要な司法判断】

 

1. 平衡税の手続きに関するフレームワーク通知
 2016 年にインド非居住者からインド顧客に対して提供される電子広告及びそれに関連するサービスに平衡税が導入されました。これに伴い、課税の対象は非居住者のe コマース事業者によって得られた所得にまで拡大され、2%の税率で課せられることとなりました。2020 年平衡税規則の改正により、課税の際の支払い方法、従うべきコンプライアンス,不服申し立て等に関する手続きのフレームワークが定められました。
 これらは2020 年10 月28 日から有効となっています。

 


2. 2019-20 会計年度の移転価格の許容範囲
 2019-20 会計年度の移転価格の許容範囲について、卸売業者については3%、その他の事業者については1% とすることが定められました。許容範囲とは、実際の取引価格と独立当事者間価格との間の相違のことを言います。

 


3. セーフハーバーの許容限度を 20%まで増加
 「Aatmanirbhar Bharat パッケージ3.0」の一部として、住宅購入者と開発者の両方が直面する困難が緩和され、セーフハーバーの許容限度が10%から20%にまで引き上げられました。当該ルールの適用は、2020 年11 月12 日から2021 年6 月30 日の国内販売の最初の取引、かつ取引額が2,000 万ルピーまでのものに限られます。

 


4. Vodafone が国際仲裁法廷にて仲裁を獲得
 2020 年9 月25 日ハーグにある国際仲裁法廷は、Vodafone 社がHutch 社のインドの資産を取得した際にインド政府による遡求的な納税要求が課された件に関して、Vodafone 社に有利な判断をしました。2012 年には最高裁判所はVodafone 社が行ったインド非居住者同士の株式の取引に対して、インド税務当局は税金を課す権限は有していないと判断しました。その後、インド国会はインド所得税法について2012 年最高裁判所の判断を無効とすることを内容とする改正を遡及的に行いました。国際仲裁法廷は、この判断においてインド政府によって取られた税務上の立場は2 国間の投資保護条約の元での公平で平等な扱いの保証を侵害するものであるとされました。

 


5. 為替差益はキャピタルゲインとは同義でない
 Havells India Ltd 社は、株式の償還のために受け取った対価によって為替差益を獲得しました。このような本国への株式の償還は、額面価格でなされたためキャピタルゲインには該当しませんでした。株式の償還の結果としてのキャピタルゲインがなかった場合には為替差益によって利益が得られたとしてもキャピタルゲインには該当しないと、ITAT Delhi( 国税上訴裁判所デリー支部) は判断しました。

 

 

6. ESOP 発行の際の割引は損金算入可能
 Biocon Ltd. 社がESOP『Employee Stock Ownership Plan(従業員による株式所有計画)』を割引価格で発行することの主な目的は、特定の従業員の一貫したサービスを確保することで利益を上げることにありました。

 この割引は全体として、明らかに営業目的で負担されたものであったため、営業上の損金算入として認められることがカルナタカ高等裁判所によって判断されました。

 


7. ケアンが国際司法裁判所で仲裁に勝訴
 2020 年12 月23 日、ハーグの国際仲裁裁判所は2006-07 会計年度のインド事業の内部再編に起因するインド政府の遡及的課税要求に関して、ケアン(Cain Energy Plc) に有利な判決を下しました。組織再編の下で、ケアンインディアホールディングスの株式はケアンUK によってケアンインディアに譲渡されました。
 これにより、ケアンインディアによる株式のIPO に先立って、英国を拠点とする会社がキャピタルゲインを獲得したかどうかについて異なる解釈が生じました。
 この判決においてPCA はインド政府による遡及的課税要求は、インドと英国の間の二国間投資協定の管轄下にある税関連の投資紛争にあたり、同条約に基づく公正な取り扱いに違反してそのような要求をしたとみなされました。

 

 

※本文より一部抜粋
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