日付2012/05/11
日本
SCS Global Consulting KK
今月は平成22 年2 月に発行されたばかりの財務省発行の「平成22 年度税制改正(案)のポイント※」のうち国際課税の部分での「タックスヘイブン税制(海外子会社合算税制)」について触れたいと思います。改正案では(1)トリガー税率の引下げ、(2) 適用除外基準の見直し、(3) 資産性所得に対する課税等の3 つが挙げられております。日本の法人税率の高率については経済界からの引き下げを常に要求されている事項ではありますが、この日本の高率と諸外国の低率(例えばシンガポールは法人税率17%)を利用した租税回避に対抗するため、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)という課税方式があります。日本においては日本内国法人がグローバル化に伴い、子会社等を税負担割合の低い諸外国に設立し、本来は日本内国法人に分配されるべき事業所得等を子会社で留保するなど租税負担の軽減を図る事が増えてきたため、これを防止するために1978 年に創設されたのがタックスヘイブン対策税制となります。
(1) についてこれまでトリガー税率(この税率以下の諸外国で租税回避を行おうとするとタックスヘイブン対策税制が適用されるという税率)を25% に据え置いておりましたが、今回の税制改正案では20% に引き下げる見直しが行われます。これは諸外国が税率の引き下げ傾向にあり、実体に合わせ日本が取るべくして取った対応と言えるかと思われます。これにより法人税率( 実効税率) で見た場合、中国(25%)、韓国(24.5%)、マレーシア(25%)、ベトナム(25%) が対象外となりタックスヘイブン課税がかからない事になります(但し、税負担の判定は各子会社の実際の税負担を基に行われます)。一方で例えばシンガポールは17% であることから法人税率から見ると、依然としてタックスヘイブン税制が課税される事に注意が必要です。
なお(2) 適用除外基準の見直しも検討されましたが、これは企業実体を伴っていると認められる統括会社(事業持株会社・物流統括会社)の所得(下記(3) 資産生所得は除く)について合算対象外(つまりタックスヘイブン対策税制対象外)となるよう措置される案となります。しかしながら依然として適用除外基準については会社の事業やスキームに応じて慎重に検討すべき課題となります。
※本文より一部抜粋
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