Global Insight

グローバル・インサイト

Global Insight vol.12

日付2012/08/22

インド

 

India (Corporate Catalyst (India) Private Limited (in JV with SCS Global))


【日・インド社会保障協定交渉における実質合意】

 日・インド社会保障協定第4回政府間交渉が、2012年5月28日から30日において実施され、実質合意に至りました。同協定が締結されたことで、日印間における公的年金制度に関する適用調整等を行うことが可能となり、日印それぞれに進出する企業及び個人の保険料の二重負担が軽減されることになります。そのため両国間における経済交流が、より一層促進されることが期待されています。

 

1 . 現行のインド公的年金制度の概要

 現行の公的年金制度としては、被用者積立基金(EPF : Employee’s Provident Fund)と被用者年金制度(EPS : Employee’s Pension Scheme) の二つがあります。両制度とも20名以上の従業員を雇用する企業に対してのみ適用されるもので、雇用主・被用者それぞれが給与の12%(合計24%) の保険料を負担する内容となっています。

 月収6500ルピー以下の被用者のみがEPF・EPSへの加入義務を負うのが原則ですが、平成20年11月に制度の改正が実施され、国際的労働者(IW : International Worker)(①インドで就労する外国人、及び②インドが社会保障協定を締結する国での就労(又は就労したことのある)インド人) については所得の多寡にかかわらず当該制度への加入が義務付けられています。

 当該改正により、インド・日本間での進出企業及び個人の社会保障の二重負担が問題となり、インド・日本間で社会保障協定政府間交渉が行われていました。

 

2. 社会保障協定交渉における実質合意の内容
 今回の実質合意内容によると、(インドに進出する日本企業を例にとると)まず就労が行われる国(インド)の法令のみを適用することを原則としつつも、例外として、派遣期間が5年以内と見込まれる被用者の場合には、派遣元国(日本)の法令のみが適用されることになりました。これにより両国の年金に関する法令の二重適用が回避できるようになります。つまり、企業・個人双方の社会保険料の二重負担の回避が可能になりました。

 また、両国の保険期間を通算できるようになったことで、従業員の年金を受給する権利を確立させることが容易になるといえます。

 保険料の還付についてですが、EPFでは、今回の協定に還付に関する規定が含まれる予定となっています。一方、EPSについては、インド国内法に基づき、協定発効後における両国の保険期間の合計が短期間の者については、保険料が還付されることとなる見込みです。

 

3. 今後の流れ
今後は、協定案文の確定等必要な作業及び調整を行い、早期の署名を目指すことになりますが、作業及び調整等の具体的な時期については未定となっています。また、署名がなされた後、両国において所定の手続きを経ることで、初めて効力が発生することになります(日本の場合には国会承認が必要)が、実質合意から協定までは数年かかる場合もあり、細かい部分での修正も随時行われるため、今後の動向に注視する必要があります。

 

※本文より一部抜粋
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